123、祝婚歌

先日、本屋さんに吉野弘さんの詩集が山積みされていた。

ここのとろろ忘れたころに、吉野さんの『祝婚歌』が話題になり、人々を魅了する。

この詩が読まれると直ぐに問い合わせが殺到する。

誰の詩なのか。なんという詩集なのか。

タイトル通り、結婚へのはなむけのお祝いの詩なのだが、人々の胸に響き、

結婚式で朗読される事も少なくない。

まさに最上級の祝婚歌だと思う。

吉野さんご自身が「この詩は僕の民謡みたいなものだから、

この詩に限ってどうぞなんのご心配もなく」と書かれている。

ということで私も、ご紹介させていただきます。

初めて読んだ時の気持ちの揺れは忘れません。

 

●『二人が睦まじくいるためには』 吉野弘 童話屋

●『続・吉野弘詩集 現代詩文庫119』 思潮社

 

『祝婚歌』  吉野弘

二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい

立派すぎないほうがいい

立派すぎることは 長持ちしないことだと気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい 

完璧なんて不自然なことだと うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい

ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても

非難できる資格が自分にあったかどうか

あとで 疑わしくなるほうがいい

正しいことをいうときは 少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと

気づいているほうがいい 

立派でありたいとか 正しくありたいとかいう

無理な緊張には 色目を使わず

ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに ふと 胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そして なぜ胸が熱くなるのか

黙っていても

二人にはわかるのであってほしい

 

ついでに哲学者クシマゴ先生の祝婚歌もいかがでしょうか。

哲学者が語る愛です。 古本屋にあるかなー。

●『祝婚歌』 串田孫一 村山書店 昭和31年刊行

時代は廻り廻りますね。 まさにリインカネーション。